日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PD-012
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4. 臨床・障害
うつ病・不安障害の分類可能性と症状ネットワーク構造の検討―Gaussian graphical mixture モデルに基づく潜在ネットワーク・クラス分析―
*樫原 潤竹林 由武国里 愛彦伊藤 正哉
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抄録

うつ病と不安障害は併存率が高く,併存事例では治療の予後が悪くなる。こうした併存事例への理解を深めるため,近年の研究では,従来の診断分類にとらわれず,クラスタ分析に基づいてうつ病・不安障害患者を分類する試みが盛んになっている。この試みをさらに活性化させるために,本研究は,数理統計学の分野で発展した「Gaussian graphical mixtureモデルに基づく潜在ネットワーク・クラス分析」を応用して患者データを分析した。分析対象は,うつ病・不安障害患者1521名(うつ病406名,パニック障害193名,社交不安障害116名,強迫性障害66名,併存事例735名;平均42.42歳,SD=9.50)から収集した諸症状のデータセットであった。潜在ネットワーク・クラス分析を実施したところ,多様な診断名を含む患者クラスタ(例えば,強迫とパニックの症状が強く,うつと社交不安の症状が中程度のクラスタ)を4種類特定できたと同時に,各クラスタにおける諸症状間の相互作用関係をネットワーク構造として視覚化できた。このことにより,各クラスタにおける中核症状を特定できるなど,既存のクラスタ分析を超えた潜在ネットワーク・クラス分析の臨床的有用性を示すことができた。

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