主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
筋疾患の代表的疾患である筋ジストロフィーは,徐々に筋力低下による運動障害が起き,QOLにも大きく影響する進行性の疾患である。治療研究の発展により平均寿命は延びているが,根治的治療法はなく,リハビリテーション,福祉的支援,心理社会的支援などが長期的に重要な役割を担っている。しかし,実際に当事者が抱えている困難さや必要な支援についてのモデル化は十分には行われていない。とりわけ,ベッカー型筋ジストロフィー患者の診断確定年齢は比較的遅いことから,幼少期からの困難さや支援に関する研究としての報告は数少ない。本研究では,42歳でベッカー型筋ジストロフィーと診断された患者1名を対象に,幼少期から現在までどのような環境で生活し,生きてきたのか,その過程を半構造化面接にて調査を行い,質的な分析を通して,困難さや行われてきた支援の検討を行った。その結果,幼少期より運動機能や認知機能の困難さを抱えていた様子,診断後は医療的・福祉的な支援を受けられるようになり,病気の経験を活かして社会の中で生きている姿が明らかになった。単一事例研究ではあるが,ベッカー型筋ジストロフィー患者の支援の糸口につながると考える。