主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
「イクメン」の言葉が示す通り,積極的に育児を行う男性が増え,父親にとって赤ちゃんは身近な存在となった。一方で,子を持たない成人男性が,赤ちゃんと接する機会はほとんどない。このことから,養育経験の有無は赤ちゃんへの新奇性に影響していると推測される。養育経験のない成人男性(非養育者)は,養育経験のある成人男性(養育者)に比べ,赤ちゃんとの関わりによる心理的影響が大きい。そのため,赤ちゃんに対する認知的評価に基づき身体応答が創発され得る。本研究では,養育経験に着目し,新生児を抱っこした際に起こる主観的感情と内分泌ホルモンの変化を検討した。
結果,非養育者は,新生児の抱っこにより,肯定的感情ならびに安静状態の増加と否定的感情の減少が見られ,唾液中コルチゾールの値は減少した。一方,養育者は,肯定的感情ならびに否定的感情,安静状態の変化はほとんど見られず,唾液中コルチゾールの値は上昇した結果となった。新生児に対する新奇性の違いにより,感情がおりなす生体反応にも影響を与えることが示唆された。
本研究の結果は,養育経験がもたらす赤ちゃんへの適応的な変化を知る手がかりとなる可能性がある。