日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PH-007
会議情報

8. 感覚・知覚
アレキシサイミアとその下位尺度が音楽に対する感情体験に及ぼす影響
*劉 晶妮福島 宏器
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

アレキシサイミア(感情失認)の傾向は,映像刺激や言語刺激などに対する感情的な経験の乏しさと相関することが報告されている。しかしLyversら(2018)は,「音楽」という感情刺激に対しては,逆にアレキシサイミア傾向が高いほど感情的な経験が強いことを報告した。本研究は,アレキシサイミアの下位尺度や共変量(特性不安)を含めてこの知見を詳細に再検討することを目的とした。中国人(n=348)と日本人(n=341)を対象として,参加者の基本属性,トロント・アレキシサイミア尺度,ジュネーヴ音楽感情尺度と状態特性不安尺度を測定した。分析結果から,日中どちらのポピュレーションにおいても,アレキシサイミアが高い人は音楽に対する感情経験の強度が高くなる傾向が示され,Lyversら(2018)の結果は概ね確認された。さらに,アレキシサイミアの中でも特に,感情の同定困難という下位因子が音楽に対する感情経験の強さと関連することが新たに示唆された。この結果の解釈として,音楽経験にはもともと言語的な理解に依存しない特性が大きく,感情を言語概念的に同定することが困難なアレキシサイミアにとって,かえって感情を解放させる契機となる可能性が考えられる。

著者関連情報
© 2020 公益社団法人 日本心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top