主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
ジェンダー化された言語を通じて,ジェンダーとセクシュアリティが表出し,個人の言語行為とその反復によって,既存のジェンダー規範が維持される(Butler, 2011)。そこで,セクシュアリティの多様性と流動性にしたがって,言語,言語に含むジェンダーの意味が変化していくと考えられる。本研究は一人のFTMの方の事例を用いて,語りからセクシュアリティ,言語とその意味にかかわる葛藤を追求する同時に,ジェンダー観とジェンダー規範の影響を明らかにする。
本研究では,半構造化インタビューを行い,逐語録をコーディングし,テーマを抽出するというテーマ分析をした。その結果,恋愛関係によりセクシュアリティの確立,情報によりセクシュアリティの理解,自己受容と他者受容,ストレスと適応,自分らしさの追求,言語表現の迷いというテーマを抽出した。その上,Aさんは恋愛関係と情報によって,自分のセクシュアリティを模索し,認め,他者受容を感じたといえる。自分らしさを追求する一方,言語表現に含まれるジェンダーの意味にとらわれた。身体の性にふさわしい言語表現の使用がストレスになり,手術後,戸籍が男性に変更した後,適応できたことが推測できた。