日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PS-011
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19. ジェンダー
性的マイノリティの語りから見るセクシュアリティと言語にかかわる葛藤―FTMの事例をテーマ分析した実践から―
*薛 小凡
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抄録

ジェンダー化された言語を通じて,ジェンダーとセクシュアリティが表出し,個人の言語行為とその反復によって,既存のジェンダー規範が維持される(Butler, 2011)。そこで,セクシュアリティの多様性と流動性にしたがって,言語,言語に含むジェンダーの意味が変化していくと考えられる。本研究は一人のFTMの方の事例を用いて,語りからセクシュアリティ,言語とその意味にかかわる葛藤を追求する同時に,ジェンダー観とジェンダー規範の影響を明らかにする。

本研究では,半構造化インタビューを行い,逐語録をコーディングし,テーマを抽出するというテーマ分析をした。その結果,恋愛関係によりセクシュアリティの確立,情報によりセクシュアリティの理解,自己受容と他者受容,ストレスと適応,自分らしさの追求,言語表現の迷いというテーマを抽出した。その上,Aさんは恋愛関係と情報によって,自分のセクシュアリティを模索し,認め,他者受容を感じたといえる。自分らしさを追求する一方,言語表現に含まれるジェンダーの意味にとらわれた。身体の性にふさわしい言語表現の使用がストレスになり,手術後,戸籍が男性に変更した後,適応できたことが推測できた。

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