主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
本研究は,相互行作用論的観点から,生理現象としてのみ捉えられがちな妊娠の成立の社会的構築性を明らかにしたMiller (1978) にもとづき,職場で女性が〈働き手〉から〈妊婦〉になるプロセスに焦点を当てる。
妊娠した女性が職場で〈妊婦〉になる/であるということは,妊娠している女性が他者に向けて〈妊婦〉としてふるまい,他者がそれに応じる一連のプロセスであり,女性と他者と協働的に(ときに交渉,闘争の中で)遂行していくプロセスである(坂本,2005;上野,2005)。
今日の日本社会では多くの就労女性が問題なく職場で〈妊婦〉になるわけではなく,妊娠により女性の処遇がしばしば問題になる。その際,明示的にもしくは暗黙裡に,女性を何者であるとするか線引きをおこなうために〈働き手〉/〈妊婦〉を定義する場面が生じる。妊娠した女性を職場でどう扱うか,どのような待遇や配慮をするかは,〈働き手〉/〈妊婦〉とはどのような者なのかについての意味付けとセットになっている。そこで本報告では,それが生じやすい状況とその定義内容について明示し,足立(2019)で示した職場と〈働き手〉/〈妊婦〉の自己志向の4類型毎に比較検討をおこなう。