日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
セッションID: PC-033
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3.社会・文化
加害者の子どもに対する排斥行動の抑制要因の検討犯罪動機の悪質性と犯罪原因信念の観点から
*谷口 友梨
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抄録

遺伝的本質主義の考えは加害者の子どもへのスティグマの連合を促進する(Mehta & Farina, 1988)。本研究は,犯罪原因の所在を実験的に操作することで,加害者の子どもに対する排斥行動を抑制できるかを検討した。Web上で実験を実施した。「犯罪の原因は親からの遺伝にある」または「犯罪は周囲の環境から誘発される」ことを主張する文章のうち一方を提示した。その後,動機の悪質性が異なる2種類の犯罪シナリオのうち一方を提示し,加害者とその子どもの印象,子どもとの心理的距離および加害者家族に対する態度を測定した(有効回答数は363名)。その結果,「犯罪原因は遺伝にある」という信念が強いほど,加害者の子どもに対する排斥行動が生じやすいことが示された。一方,「犯罪原因は環境にある」という信念の強さは,動機の悪質性が低い犯罪行動に対しては,加害者の子どもに対する排斥行動の抑止に作用するものの,動機の悪質性が高い犯罪行為に対しては,加害者の子どもに対する排斥行動を促進することが示唆された。これより,環境信念が加害者の子どもへの排斥行動に及ぼす影響は,犯罪の性質に依存する可能性があることが示唆された。

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