主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
我々は日常生活の様々な場面で傷つきを感じるが,中でも社会的排除は頻繫に起こる現象であり,心身両面の痛みを引き起こす重篤な事態でもある。本研究では,社会的排除による傷つきを理解するにあたり,非意識レベルで心身の反応を起こす心理機制である自動性と,自分を含める環境に対して意識的に統制しようとする心理機制である自己制御に焦点を当てる。この観点から検討することにより,被排除者の意識できない苦悩と実際に体感される苦悩の両方を捉えることができると考えられる。本研究では,社会的排除事態において自動性により引き起こされる意識できない傷つきが生じる心理過程と,それに対する自己制御機能を明らかにすることを目的とする。165名を対象としたWeb調査を実施し,3水準の逐次モデルのパス解析を実施した結果から,社会的排除を経験した瞬間に自動性により湧き上がる意識できないレベルの感覚が外部の刺激に対して何も反応できなくなるといった行動レベルにおける活動性を抑制させ,さらにその抑制が存在意義や制御可能感,自尊心,支援といった基本的欲求の阻害という傷つきをもたらすことが明らかになった。