日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
セッションID: PC-139
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3.社会・文化
マンガの背景表現による自動的感情反応
*川上 直秋
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抄録

マンガは日本の代表的な文化であり,日本人にとって極めて身近な娯楽の一つである。マンガの基本的な構成要素としては,絵・文字・コマ割りがある。この限られた範囲内で登場人物の複雑な心情を表現するためのマンガ特有の表現技法として,背景表現(背景線など)がある。本研究は,マンガの背景表現それ自体によって自動的に感情が喚起されるかを感情プライミングの手続きを用いて検討した。研究は4つの実験から構成され,感情プライミングの手続きに則った。具体的には,プライムとして予備調査から選定された背景表現(喜び5種類・怒り5種類)を200 ms呈示した後,ターゲット刺激の感情価(喜び・怒り)をキー押しで判断させた。ターゲット刺激には,実験1でマンガの人物イラスト,実験3で人物の表情写真,実験4で単語を用いた。一連の実験の結果,プライムとターゲットの感情価が一致している場合の方が,不一致の場合に比べて,キー押しに要する反応時間が短いという感情プライミング効果が,ターゲット刺激の形態に関わらず一貫して確認された。以上の結果より,マンガの背景表現それ自体が自動的に感情を喚起させることが明らかとなった。

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