主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
本研究の目的は,不完全感(incompleteness)から強迫的な行動に至るプロセスを検討することであった。大学生10名を対象に伊藤(2008)を参考にインタビュー調査を行い,不完全感場面における認知,気分・感情,身体的反応,行動,対処について尋ねた。分析方法は大谷(2008)によるSCATを用いた。その結果,参加者が挙げた不完全感場面は平均7.2場面(SD=2.55, Range=3-11)であり,不完全感が大学生において日常的に見られる現象であることが確認された。また,参加者の語りを元に不完全感の体験順序をまとめた結果,場面によって不安感と不完全感の順序が異なっており,それに伴い有効な治療的アプローチも異なる可能性が示唆された。そのため,強迫的な行動にアプローチするためには,その背景にある不完全感と不安感がどのように体験されているかアセスメントを行う必要があると考えられる。さらに,不完全感から不安感が生じている場合,身体感覚へのアプローチが有効である可能性が示唆され,今後の研究ではボディスキャンや臨床動作法等のアプローチの効果について検討を行う必要がある。