主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
本研究は,色や図形などの組み合わせを記憶する物体作業記憶(working memory:WM)と,色または図形のみを記憶する特徴WMの各検索過程において,空間的注意の働き方が異なるのか,事象関連脳電位(ERP)を用いて検討した。特徴WMの検索過程において空間的注意が働くことは,ERP指標(N2pc-like ERP)を用いた研究により示されている。一方で,特徴WMよりも物体WMにおいて,空間的注意がより重要な役割をもつという主張がある。もしこの主張が正しければ,特徴WMよりも物体WMの検索過程において,より強く空間的注意が働くと予測される。そこで本研究は,色のみを記憶する特徴WM課題と色と図形の組み合わせを記憶する物体WM課題を設け,各課題のセットサイズを2個と4個で操作し,それぞれの検索過程におけるERPを計測した。結果,検索過程におけるN2pc-like ERPの振幅は特徴課題より物体課題で増大した。なおセットサイズの影響は見られなかったため,この効果は課題難度では説明されない。これらの結果は,物体WMの検索過程において,特徴WMの場合よりも空間的注意が強く働くことを示した。