抄録
1. はじめに
本報告は、アンドリーエンが行った緻密な調査研究を基に、ペルー植民地の社会的成層関係において最上層部の検討・考察を行う。17世紀南米太平洋沿岸部の政治・経済の中心都市としてのリマを舞台に、海岸部諸地域の生産や商業の実態、海外との交易にも焦点をあて、ペルー副王領における経済の多様化とリマ商人勢力の台頭を考察する。そして引き続いて副王領の財政・財務状況を明らかにする。
上記の作業を経て、水銀をメキシコならびにポトシに運んでいた主体、海外からポトシにもたらされた物資のうち、太平洋沿岸部経由で輸入された舶来品(大半が奢侈品)をポトシ市場に届けた主体、そしてその対価としてポトシ銀を太平洋岸・中米地峡経由でスペインなりメキシコ(アカプルコ)方面に送り出した主体、太平洋沿岸部地域産の品々、例えばキト産のラシャや砂糖などをポトシに運んだ主体が、リマ商人であったことを明らかにしたい。
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