抄録
アンデス世界は口頭伝承の宝庫である。アン デス地域とりわけペルーでは20 世紀初頭から今 日に至るまで各地で地域の説話が書籍などとし て紹介され、郷土愛の深さを競うかのように矢 継ぎ早に刊行されている。それがペルー独特の 地域主義に根差すアイデンティティ、インディ へニスモと結びつき、地域における説話の掘り 起こしと刊行という形で勢いづくこともある。
ペルーにおける説話ブームは、公教育とも緊 密に結びつき、文化庁長官に就任したホセ・マ リア・アルゲダスが、ペルー全土の教員に「説 話コンクール」を呼びかけ、結果として全国か ら数万編以上の説話を蒐集した。そしてそれら を採集地に合わせ、海岸部・山間部・森林地域 に分類し、地域差が浮き上がるような説話を選 んで出版(ホセ・イスキエルドとの共編で、ペ ルー共和国・文部省の刊行物『ペルーの神話、 伝説、昔話』1947)された。この試みは大成功 をおさめ、説話への関心はますます高まった。
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