抄録
従来のホスピタリズム研究は,主として集団養育の効果として研究され,施設児とその家族の関係の分析なしに行われて来た。私は施設児研究を通じて,物理的には家族と分離されていても,心理的には施設児の家族が施設児に影響を与えている面を観察し,施設児とその家族との関係を入所理由の分析により把握しようと努めた。その結果,彼等の家庭は欠損又は機能的欠損家庭であり,社会経済的階層は極貧層に属するものが多いことが判明した。かかる結果からして,養護施設児の問題は単に集団養育による効果だけでなく,施設児とその家族との関係におけるEmotional SecurityのDeprivationが根底にあるものと解される。