抄録
現在,IT (Information Technology)が世界的にめざましく発展している。18世紀から19世紀には蒸気エンジンが発明されて第1次産業革命が起こり,19世紀から20世紀には重化学工業を中心にして第2次産業革命が起こった。これら2つの産業革命は大量生産を可能にしたが,20世紀から21世紀にかけて起こっているIT革命は電気通信技術と電子計算機技術の融合による情報活動の大衆化であり,大量生産とは性質を異にする技術革新である。ITは果たして日本経済の牽引役となり得るであろうか。現在のところITの拡大がマクロ経済に及ほす影響を示す統計の整備は不十分であるが,本稿では産業連関表を分析ベースにしてこの課題に挑み,ITが日本経済にとっていかなる位置にあるかを明らかにするとともに,望ましい経済政策を論じている。