産業連関
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住宅金融公庫廃止後の融資スキームに関する一試案
―資金循環・産業連関分析からの提案―
辻村 和佑溝下 雅子
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2002 年 10 巻 4 号 p. 24-34

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抄録

バブル崩壊後,小さな政府を標榜することで国は財政投融資計画を変貌させ,特殊法人改革を推し進めようとしている。しかしながらこれは,公的金融部門から民間への還流経路を絶つことで,資金の政府への一極集中を招き,わが国の資金循環構造に負のスパイラル(資産デフレ・スパイラル)を構築している。一方で住宅金融公庫廃止にともない,民間による長期固定かつ低金利の住宅ローン供給の必要性は論を待たない。しかしながら財務格付等を考慮すれば,民間金融機関にすぐにこれを期待することは困難であろう。本稿では当面の解決策として,民間金融機関が既存の一般勘定とは独立に住宅ローン専用の特別勘定を設定し,この勘定が発行する住宅ローン債券に政府保証を付与することを提案している。資金循環表と産業連関表を併用した今般の波及分析の結果は,クラウディングアウト効果が払拭されることもあり,新しいスキームのもとでの民間主導の住宅投資の生産誘発効果が,従前の公共投資のそれをはるかに凌駕することを示唆している。

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© 2002 Pan Pacific Association of Input-Output Studies
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