産業連関
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日本・韓国・中国の自由貿易協定
藤川 清史渡邉 隆俊
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2003 年 11 巻 1 号 p. 31-44

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抄録

 近年,東アジア地域での自由貿易協定(FTA)を研究する機運が高まっている.そうした状況を背景として,本稿では次の2 つを主な目的としている.1 つは近年注目されているGTAP モデルの概要を紹介することである.自由貿易の経済効果を分析するためには多国間モデルが必要であるが,従来はそうしたモデルの開発には多くの時間と費用をかけねばならなかった.機動的対応のできるモデルがあれば使いたいという,かねてからあった要請に応えるために開発されたものがGTAP モデルである.もう1 つは,このGTAP モデルを用いて,東アジア地域で自由貿易協定が締結された場合を想定して,その経済的効果を予測することである.本稿では関税撤廃の直接効果のみに焦点をあて,FTA 後に予想される生産性上昇効果や資本蓄積促進効果は扱わなかった.そのために,予測される経済効果は大きくはないが,それでも,FTA 締結はグループからもれた域外国の経済厚生を低下させる傾向があること,また,FTA 締結国の数が拡大するほど世界全体の経済厚生も高まることが確認された.

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© 2003 環太平洋産業連関分析学会
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