産業連関
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貿易自由化と賃金格差
伴 ひかり
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2003 年 11 巻 1 号 p. 45-54

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抄録
 ヘクシャー=オリーン理論にしたがえば,熟練労働豊富国である先進国と非熟練労働豊富国である発展途上国の間の貿易拡大は,先進国における賃金格差の増大と,発展途上国におけるその縮小をもたらす.近年,東アジア地域においても自由貿易協定の構想が活発化しているが,それらは日本の労働市場にどのような影響を及ぼすだろうか.本稿では応用一般均衡モデルの1 つであるGTAP モデルを用い,日本と中国,NIEs,ASEAN,東アジア,全地域のそれぞれの間で関税を撤廃するという5つのシナリオのシミュレーションを実行した.対東アジアと対全地域のシナリオでは賃金格差は拡大するが,他のシナリオでは確認できない.対中国では若干縮小する傾向さえみられる.賃金の動向には生産や貿易の構造が複雑に影響することが明らかになった.
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© 2003 環太平洋産業連関分析学会
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