抄録
本稿では多地域産業連関モデルを応用して,中国における地域間分業構造及び結合構造について,生産額ベースの指標と付加価値ベースの指標を用いて考察した.付加価値ベースの分業率とは,生産活動によって実現される付加価値が,地域間で配分される構造を地域・産業別で示すものである.また,結合構造指数とは,付加価値生産性の異なる地域・産業が,生産活動で結合している構造を示すものである.本稿の考察で明らかになったのは,第一に,中国沿海地域では,生産性の低い地域産業と結合して,生産性の改善に貢献しているが,中国内陸地域では,生産性の高い地域産業と結合して,他地域産業の効率性を享受していること.第二に,生産活動で実現される付加価値の流出率は,沿海地域から内陸地域へは低く,逆に後進地域から沿海地域へは高くなっており,不均衡な連関構造になっていることである.