レオンティエフによって考案された産業連関表が,国民経済計算体系に推計の基礎を与えていることは良く知られている.これに対して,コープランドが提案したマネーフロー表が,SNA の表象形式に重要な基礎を与えているという事実は,あまり認識されていない.初学者に93SNAの表象形式が一見複雑に見えるのは,これがモノではなくマネーをもとに発想されているからにほかならない.そこで本稿においては,マネーフロー表の構想を特徴づける重要な論点,すなわち制度部門別勘定,バランスステートメントと複々式記帳,現金主義と取得価額主義に焦点をしぼり,この3つの観点から現行の93SNAの表象形式を再検討する.