2024 年 31 巻 3 号 p. 21-35
本稿では,長引く新型コロナウイルス感染症の影響で,都道府県間の人口移動にどの様な変化が生じたのかを,総務省統計局が公表している「住民基本台帳人口移動報告」から作成される都道府県×都道府県の人口移動行列を基に,要因分解や産業連関分析の三角化の手法を応用して捉える試みを行った.分析結果によると,コロナ禍(2020 年~2022 年)において,これまで人口が集中する一方であった東京都や愛知県への転入超過に歯止めがかかり,近隣やより人口密度の低い他道府県へと人口が流出する傾向が見られた.情報通信技術等を十分に活用した在宅勤務が普及し,大都市圏以外に居住地域が分散することで,各地域の経済活性化が促されれば,日本経済全体の景気改善の一つのきっかけになるのではないかと期待される.