産業連関
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SAMから見た日本経済の特徴(2)
―経済循環内部における実物・金融取引の推移―
牧野 好洋
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1997 年 7 巻 3 号 p. 24-41

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抄録

 平成景気時,株式投資,外部借入への傾斜は経済ファンダメンタルズを超えるほどにおよび,「積極借入による積極投資」を通して,周期経済をさらに過熱させた。一方,バブル崩壊後,それは重い財産所得支払負担を残し,後の不況を一層深刻化させた。実物取引と並行して金融取引が活発に行われている今日の経済循環下,金融市場を通した資金調達・投資変化,外部借入に伴う財産所得支払負担の影響は,マクロ分析において無視できない要因となっている。本文で紹介されるSAM(Social Accounting Matrix; 社会会計マトリックス)は,経済循環内部のこれら変化を観察するため整備されたデータベースである。同表上には(財産所得移転,金融資金調達・投資を含む)実物・金融取引がまとめられ,全体に各年のフロー経済循環が表示される。以下ではSAMの時系列比較(1970-93年)を通して,同フレームワークから見た資金調達・投資面,財産所得支払負担面の変化を(とくにバブル前後を中心として)観察する。そこからは,平成景気時の金融資金調達比率,株式投資比率の上昇,バブル崩壊後の財産所得支払負担増が読み取られる。

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© 1997 環太平洋産業連関分析学会
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