2024 年 77 巻 30 号 p. 47-61
先使用権が主張される場合には、(A)先使用者が開発した技術と同一内容の技術に他者が特許権を取得した場合と、(B)先使用者が自社技術を実施する過程で発明として認識していなかった技術に他者が特許権を取得した場合とがある。現行法は、特許発明と同一の発明を独立に完成させたことを先使用権の要件と規定していることから(A)の場合を念頭に立法化されていると考えられ、最高裁も(A)の場合に適合的な解釈基準を定立している。本稿は、現行法下の先使用権制度の趣旨を「発明の奨励」と捉える立場から、(A)の場合を念頭に置いた現行法の解釈のあり方を論じるとともに、立法論として、現行法とは別に、 (B)の場合を想定したルールのあり方を検討するものである。