2025 年 78 巻 31 号 p. 227-246
生成AIと知的財産法を巡っては、目下、多種多様な生成物の法的取扱い及び権利侵害といった問題を中心として、知的財産法各法の領域にわたり様々な議論が生じている状況にある。もっとも、コンピュータ・プログラム言語によるプログラムコードの生成を行うAI(コード生成AI)と著作権法を巡る法的議論については、コンテンツ(画像、音楽等)を生成するAIと著作権法に関する議論と比べると、現状では未だ十分な検討・議論がなされていない状況にあるといえるものの、アメリカでは、コード生成AIと著作権に関する民事訴訟が連邦地裁に係属中であり、法的リスクが表面化しつつある。他方で、コード生成AIの発展・普及が、今後のソフトウエア産業の在り方に対してもたらすインパクトは極めて大きいものであると考えられる。このことは、コード生成AIと著作権法に係る問題を契機として、プログラムを著作物として法的保護を与えることを所与としてきた現行のプログラム保護法制自体の在り方を再考することに繋がる可能性もあるものと考えられる。 以上の問題意識から、本稿では、アメリカにおいて訴訟審理が目下進行中である、GitHub Copilotを巡る事案の検討を糸口として、コンテンツ生成AIとの比較、日本法の下で想定される著作権法上の課題について検討して、コード生成AIと著作権法を巡る法的議論に係る考察を行う。これらを踏まえて、現行の知的財産法制の下でのコンピュータ・プログラムの保護の在り方自体に対する将来的な方向性についても若干の展望を加えるものである。