抄録
我々はMOCVDにレーザーを導入することによってイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)膜の成膜速度が飛躍的に向上することを見いだした。本研究では、成膜条件(レーザー出力、基板予熱温度)による膜の微細構造と成膜速度の変化について調べた。基板予熱温度を750℃とし、種々のレーザー出力で成膜した結果、レーザー出力70-100W以上で成膜速度が急激に高くなり30μm/h に達した。成膜速度が高い場合にはレーザー光と原料ガスが交錯する空間で強い発光が観察され、高強度のレーザー光によって気相中の原料化合物が励起され、高い成膜速度が得られるものと考えられる。レーザー出力が200 Wでは、基板を予熱しない場合でも柱状組織を持つYSZ膜が成膜速度120μm/h で得られた。予熱温度550℃のときに成膜速度は最大(450 μm/h)となり、(200)配尚の柱状組織が発達したYSZ膜が得られた。