抄録
無機材料の低環境負荷型プロセスに対する興味から、我々は生体内で無機結晶が合成されるプロセス(生体鉱化作用)のメカニズムに注目した。生体鉱化作用の反応は全て常温で進行するため、熱エネルギー投入を必要としない。生体内ポリマーが無機結晶形成の場となる有機マトリックスとして作用し、その内部で結晶核形成・物質拡散が制御され、結晶成長制御がなされている。リン酸カルシウム結晶は、しばしばナノ粒子の状態で生体硬組織内部に見られる材料で、薬剤、生体材料、有害物質の固定用材料等として高付加価値材料に成り得る。有機分子の相分離によって生じる微細構造に、生体鉱化作用における有機マトリックスの働きを担わせることで、全く加熱することなくリン酸カルシウムナノ結晶を合成することを試みた。