抄録
本研究では,社会的自立はどのような経験や支援によって達成されるのかという問いをたて,社会的自立を達成した1名の不登校経験者の“不登校から社会的自立までの経験”をTEMに起こして分析し,社会的自立に至るまでにどのような経験や周りの影響があったのかについて調査を行なった。そのためにまず社会的自立の整理を行い,本研究では国民の三大義務を参考に定義を行った。また経験の分析の結果は,親や学校の教師などの周りの大人の適切な支援や,教育支援センターなどの支援施設の重要性を再確認することができた。また同時に,研究協力者は教育支援センターの先生をロールモデルとし,進路や社会的自立の実現を行なっていた。このことからロールモデルの形成の重要性が明らかになった。一方で協力者自身は不登校という経験もロールモデルを形成し社会的自立を達成するきっかけとなった重要な経験のひとつと捉えていることも明らかになった。