抄録
近年、ナノチューブ、ナノワイヤなどのナノレベルの異方成長に起因する様々な形態が注目を浴びている。しかし、それらの形成機構には不明な点が多く、特に立方晶のような対称性の高い結晶系における異方成長は十分に説明されていない。ここでは、モデルケースとして銀結晶を用い、種々の有機分子の添加によるナノワイヤの生成を検討した。硝酸銀をアスコルビン酸で還元する際に4つ以上のカルボキシル基を持つ分子あるいは高分子を共存させると、添加物の種類や濃度に応じて径が異なる銀ワイヤが生成した。この様な異方性成長は元来等価である{111}面に対する有機分子の段階的な吸着により誘起されると考えられる。