抄録
現在最高性能のp型酸化物熱電材料であるNaCo2O4については、NaサイトやCoサイトへの元素置換に関する研究が広く行われているが、アニオンサイトを置換した報告はない。NaCo2O4の価電子帯はO2p軌道の寄与が大きいため、アニオン置換によりp型伝導を大きく変調できる可能性がある。そこで、OサイトをFで置換し、置換量に対する構造や物性の変化を検討した。F置換試料のXRD測定から、全ての試料でフッ化物などの不純物ピークは観測されず、試料の合成に成功したと考えられる。また、格子定数測定において、Fの置換量に応じてa軸長が減少し、c軸長が直線的に増加するという結果が得られたことから、FがOサイトに固溶していると考えられる。