抄録
通常は反強磁性体となるスピネル型構造の亜鉛フェライト(ZnFe2O4)をスパッタ法により薄膜化すると、フェリ磁性的挙動を示すことは以前の発表にて報告したが、これはカチオンが無秩序に配列した準安定スピネル相に起因する現象であると考えられる。そこで今回、Zn-K吸収端における近傍の微細構造(XANES)を理論的に解析することで局所構造の考察を行った。第一原理計算により、Znがスピネル型構造中の四面体サイト及び八面体サイトをそれぞれ占めた場合の理論スペクトルを求めたところ、薄膜試料の実験スペクトルは両方の理論スペクトルの重ねあわせにより再現された。これにより、Znによる両サイトの占有、すなわちカチオン無秩序配列がスパッタ薄膜中において実現していることが確認された。