抄録
我々は,オクチル基のような中程度の鎖長のアルキル基をメソ多孔シリカの細孔内壁にグラフトしたナノ有機・無機複合体が,水中でノニルフェノール(「環境ホルモン」のひとつ)やアルキルアニリン類を分子認識して選択的に吸着除去することを見出している.本研究では,有機修飾により疎水化されナノ空間の試料を水に浸漬した状態での挙動を固体NMRを用いてはじめて解析した.細孔内にグラフトしたアルキル基は乾燥状態では激しく熱運動していた.試料を水に浸漬すると,ペンチル基程度の短いアルキル基を修飾した試料では,アルキル基の運動が大幅に抑えられた.これは,液体の水がナノ細孔内に進入したことを示す.一方,オクチル修飾体の場合,水に浸漬してもアルキル基の運動性はほとんど抑制されなかった.このことは,オクチル修飾したメソ多孔シリカのナノ空間が,液体の水の進入を許さない極めて高い疎水性をもつことを示している.有機分子吸着におけるこの疎水ナノ空間の役割についても考察した.