抄録
ダイヤモンド圧子をガラスやセラミックスに押し込むと圧痕が表面に形成され,圧痕周囲には残留応力が発生する。残留応力の大きさは塑性変形や高密度化などの圧痕形成メカニズムに影響を受け,高密度化は体積収縮を意味するため残留応力には寄与しないと予想される。本研究では,圧痕体積のうち高密度化された体積は熱処理により回復するという仮定のもと,原子間力顕微鏡を用いてビッカース圧痕の体積を熱処理前後で測定し,圧痕体積に対する高密度化体積の割合を決定した。さらに,押し込み荷重と,高密度化割合との関係を評価し,ビッカース圧痕周囲の残留応力の荷重依存性が,高密度化の荷重依存性と密接に関係していることを明らかにした。