抄録
亜鉛含有リン酸三カルシウム(ZnTCP)やZnTCPとHAPの複合体は、in vivoで宿主が骨粗鬆症状態に陥っても、骨組織がインプラントから剥離することがなく、骨/インプラント界面が長期に安定であることが判っている。この事はZnTCPの溶解性が低下しているか、ZnTCPが破骨細胞の活性を抑制していることを示唆する。そこで本研究では、ZnTCPの溶解速度を破骨細胞の吸収pH(pH5.5)で評価した。ZnTCPはZn含有率の増加に伴って溶解速度が減少した。しかし、TCPを基準にしたZnTCP(Zn:0.5及び1.0 mol%)の相対溶解量は、in vivoのTCP基準相対吸収量の3倍以上の値であった。このことは、ZnTCPのin vivo吸収量減少がZnTCPの溶解性低下に起因するのではなく、ZnTCPの破骨細胞に対する生物学的影響によって生じていることを示している。ZnTCPは破骨細胞の活性を生物学的に低下させる「耐吸収性材料」であることが示唆された。