抄録
3d遷移金属化合物の多岐に亘る物性を支配する3d電子に関する情報を直接的に得る方法として,3d遷移金属L2,3端XANESが用いられる.これは,内殻2p電子が部分的に非占有軌道となっている3d軌道へ遷移する過程で得られるスペクトルであり,3d電子に関する情報及び遷移金属周辺の構造を直接反映している.これらの情報を客観的に得るために,恣意的なパラメータを用いない第一原理に基づく解析が必要となる.本研究グループは,2成分相対論配置間相互作用法の計算コードを開発し,これをL2,3端XANESスペクトルの理論計算へと適用した.これにより,周囲環境や配位数等を反映したスペクトル変化を精確に解析することが可能となった.