抄録
強誘電体薄膜と基板との機械的相互作用は、膜の誘電応答に非常に大きな影響を与える事が知られている。その最たる例はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)であり、Haeniらは、常誘電体であるSrTiO3の薄膜に、面内引張りの格子歪みを印加する事により、室温で強誘電性が発現することを報告している。 また、歪みと強誘電相転移との関係は、その他の例でも示されている。一方SrTiO3においては、ペロブスカイト格子の酸素8面体の微小回転に伴う構造相転移も存在し、これが歪み誘起の強誘電相転移にも大きな影響を与える可能性がある。本研究では、SrTiO3薄膜をレーザー堆積法およびスパッタリング法で種々の基板上に成長させ、酸素8面体の回転に伴う構造相転移と強誘電特性との関連性を、放射光を用いた格子定数の温度依存性、誘電特性および理論計算から比較検討する。