抄録
軟X線をプローブとして利用する分光計測手法では、軽元素か
ら重元素に至る広範な物質の電子状態や化学結合状態に関する情報を得ることが可能である[1]。光電子分光法では軌道電子のエネルギー準位や電子密度状態に関する情報が得られ、近年の分光器などの高分解能化にともない、軟X線領域において100 meV以下のエネルギー分解能での各種測定が可能になっている。我々の研究グループでは、これまでホウケイ酸ソーダガラスを加熱した際に生ずるスピノーダル相分離のダイナミクスやその構造変化を、固体NMRや赤外分光法などから調べてきた[2,3]。分相により分離したホウ酸ソーダ相は酸に溶解するため、様々な「形状」や「組成」の多孔質ガラスを作製することが可能であり、例えば細孔表面に光触媒能を有するチタニアナノ結晶が析出した多孔質ガラスの作製にも成功している[4]。これまでの研究より、分相構造およびダイナミクスはホウ素の配位数と関連の深いことが示されている。分相のダイナミクスや構造変化を詳細に理解することで、機能性ナノ結晶などの分散された新しい結晶化ガラスなどの創製にも繋がる。そこで、本研究では軟X線放射光を用いて、ホウケイ酸ガラスの組成や分相処理における構造変化を詳細に調べたので報告する。