抄録
本研究では、ECRプラズマCVD法により、773~973 Kの中高温度域でチタニア膜を合成し、微細構造および成膜速度にプラズマが与える影響について調べた。基板温度はPM(マイクロ波出力)とともに上昇し、Tpre(基板予熱温度)からの温度上昇はPM=1.0 kWでは約20 K、PM=3.0 kWでは約50 Kであった。Tpre=973 K、PM=0および3.0 kWで合成したチタニア膜では、結晶相はいずれもアナターゼとルチルの混相であったが、PM=0 kWで合成した膜は比較的平滑な表面であったのに対して、PM=3.0 kWで合成した膜では結晶のファセットが入り組んだ表面組織が見られ、断面は柱状組織となっていた。成膜速度は、PM=0 kWでは60 micro m h-1 , PM=3.0 kWでは100 micro m h-1となり、プラズマの導入によって成膜速度が増大した。プラズマによる成膜速度の増大は、原料供給量が高い場合に顕著になり、プラズマ中で基板表面での分解・析出反応が速やかに進行することが示唆された。