抄録
リン酸カルシウム結晶は,現在広く生体材料として使用されている。しかし,単独で使用するには脆いといった欠点があり,さらなる靱性および柔軟性の向上が求められている。本研究では,ゲル法による,特異形状のリン酸カルシウム結晶の育成を目的とした。ゲル法により生成した結晶は,乳白色のCa<SUB>8</SUB>H<SUB>2</SUB>(PO<SUB>4</SUB>)<SUB>6</SUB>・5H<SUB>2</SUB>O球晶および板状のCaHPO<SUB>4</SUB>・2H<SUB>2</SUB>O結晶であった。得られた球晶は,きわめて長く,フレキシブルなウィスカーが複雑に絡みあった多孔質構造を形成していた。この特異形状により,生体親和性および吸着特性の向上が期待できる。板状結晶は,非常に平坦な面に囲まれていた。