抄録
近年、高品質なAlN薄膜の作製が多数報告されている。しかし、有機金属原料は自然発火性であること、AlCl3を原料とするCVD法では1200 oC以上という高い成膜温度が課題である。本研究では前述の危険性がなく、また低温でのAlN薄膜の作製法として、ヨウ化アルミニウム(AlI3)を原料に用いた。試料の作製には縦型の透明石英ガラス反応管と電気炉から構成される実験装置を用いた。AlI3粉末を加熱気化させ窒素ガスによって基板部に輸送し、アンモニアと反応させることでAlN薄膜を作製した。AlN薄膜はサファイア基板上にエピタキシャル成長していることが分かった。X線測定により、試料の残留応力を定量したところ、その値は0.004 GPaと非常に小さな値であった。よって、ヘテロエピタキシャル成長に伴う応力は大幅に緩和されていると考えられる。高分解能TEM像では、基板との薄膜との界面に中間層が確認された。この中間層が応力緩和に寄与しているものと考えられる。