抄録
非晶質固体において、Ramanスペクトルの低波数領域にBosonピーク(BP)と呼ばれる非対称かつブロードなバンドが観測されることが知られている。本研究において、ナノ結晶化を示すTeO2およびSiO2系ガラスの昇温過程におけるBP測定によりガラスの結晶化過程を調査した。
調査したガラスのRamanスペクトルにおいて100 cm-1以下にブロードなバンドが観測された。温度の上昇と共にBPは徐々に低波数側へシフトし、ガラス転移温度付近において急激な落込みが観測された。さらに結晶化温度付近で極小となった後、時間経過および温度上昇に伴い再び増加した。Tg付近におけるBPの落込みおよびTx以上の上昇は、構造緩和および過冷却液体からナノ結晶への転移によるものと考えられる。