抄録
造血幹細胞ニッチとは造血幹細胞の伸張、分化、自己増殖などの特性を制御可能な微小環境である。生体外環境で造血幹細胞ニッチ様の環境を再現することは、機能を制御した造血幹細胞を用いた新規医療の提案に繋がる。近年、この環境維持において海綿骨上に存在する骨芽細胞が重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。そこで、本研究では骨芽細胞の機能を生体外環境で高精度に制御するために、細胞培養環境下におけるCaイオン濃度に影響について着目した。その結果、種々のCaイオン濃度の培地中での骨芽細胞培養がその形態、増殖、分化、造血幹細胞ニッチ関連遺伝子の発現に与える影響が示された。よって、細胞培養環境のCaイオン濃度を制御可能な材料の開発が、骨形成のみでなく、造血幹細胞培養の観点からも今後特に重要であると期待される。