抄録
生体骨にはNa+イオン,K+イオン,Mg2+イオンなどの金属イオンが含有されている.現在,β型リン酸三カルシウム(β-TCP)は骨欠損部に埋入した際に,自家骨に置換するため骨補填材として臨床応用されている.また,β-TCPに金属イオンを固溶することにより,その機械的強度が向上することが報告されている.しかし,金属イオン固溶β-TCPの生物学的評価は,あまり報告されていない.本研究では生体骨に含有されているNa+イオンに着目し,Na+イオン固溶β-TCP(Na-TCP)焼結体を作製し,その細胞反応を評価した.
Na-TCPおよびβ-TCP焼結体上でのMC3T3-E1細胞の接着細胞数および石灰化能には有意差は認められなかったため,Na-TCPにはβ-TCPと同様の石灰化能があることを認めた.
同様に金属イオンを固溶した水酸アパタイトでは,その一次粒子径が細胞接着および石灰化に影響すると報告されている.本研究で得られた試料のβ-TCPとNa-TCPの一次粒子径はそれぞれ,4.7 μmと5.3 μmとほぼ同じであったことから,細胞接着および石灰化の程度が同様であったと考えられる.