抄録
バナジウムは,生体内必須微量元素であるだけではなく,骨芽細胞の増殖を促進し,骨形成において重要因子となるインスリン様成長因子のシグナル伝達に影響を与えることが知られている.これまでに三価のバナジウムを固溶させたβ型リン酸三カルシウムを作製し,骨芽細胞の増殖を促進することを本研究グループは明らかにしたが,低い機械的強度および高い溶解性という問題点を有していた.一方,β-TCPのリン酸サイトにケイ酸イオンが亜鉛を同時に添加することにより固溶することも報告されている.そこで,β-TCPのリン酸サイトに五価のバナジン酸イオンを固溶させた試料を作製し,その固溶形態を検討するとともに、その機械的性質およびin vitroにおける生体吸収性(溶解性)評価を行った.