抄録
強誘電体や圧電体を含む誘電体の研究は、これまでの焼結体での応用に加えて、強誘電体メモリ(FeRAM)やマイクロマシンでのアクチュエータ(MEMS)等に代表される膜形状での応用も大きく広がりつつある。膜では基板を有効に用いることで結晶配向が実現できるといった焼結体とは異なる利点がある。我々は薄膜作製方法として、MOCVDを選択した。この作製方法は他の気相からの作製方法と比較して、
a) 平衡状態に近い条件で製膜することから、欠陥の少ない高品質の膜を得られる。特に酸化物では高酸素分圧下で作製できるため、酸素欠陥を低減できる。
b) 比較的低真空を用いることから、原料濃度が高くでき、高い成膜速度が達成でき、厚膜の作製が可能である。
c) 基板上での化学反応による製膜であることから、複雑形状の基材への均一成膜が可能である。
d) 原料ガス組成を制御することによって、広い組成範囲の膜作製ができる。
といった多くの利点を有している。
本講演ではこうした利点を用いた研究成果のいくつかについて紹介する。