抄録
既報のPZT強誘電性の方位依存性に関する研究では異なる方位を持つ酸化物単結晶基板上にPZT薄膜を堆積させていることが多い[1]。単一方位の酸化物およびSi単結晶基板上にPZTを(001)、(101)、(111)方向に配向させ、薄膜に与える熱膨張の影響を同じ条件として、方位依存性を検討した例は少ない。本研究では同一方位で熱膨張率が異なる2種類の基板(YSZ/Si(001)およびYSZ(001))上に複数の酸化物薄膜をバッファー層(MgO、TiO2)として導入することで異なる配向をもった下部電極SrRuO3 (SRO)を作成し[2]、その上に(001)、(101)および(111)に配向させた強誘電体Pb(Zr,Ti)O3 (PZT)薄膜を製膜した。このようにして、基板との熱膨張率差が薄膜の残留応力と強誘電特性に与える影響、およびそれらの結晶方位依存性を検討した。