抄録
BaTi2O5は2003年に強誘電性が確認された比較的新しい強誘電体である.BaTiO3よりも強誘電相転移温度Tc が高く,誘電率が大きいことから,盛んに研究されている.2006年,J.Yuらは無容器浮遊法によって,BaTi2O5球状ガラスの作製に成功した.これは,ガラス形成酸化物を添加せずにチタン酸化物系強誘電体のバルクガラス化に成功した初めての例である.BaTi2O5ガラスを室温から再加熱すると,安定な強誘電相( γ 相)が析出する前に,準安定な α 相、β 相が順に結晶化する.興味深いことに,α 相の結晶化温度(994 K)において誘電率が数十から107に達する急激な増大が見られ,さらに,数万という巨大な値を β 相の結晶化温度(1038 K)まで維持する.J.Yuらはこの巨大誘電応答を,α 相の結晶構造が有する分極に起因するとした.しかし,放射光X線回折実験によっても α 相の構造解析は成功していないため,巨大誘電応答と α 相の結晶構造との直接的な相関は不明である.そこで本研究では,分極を持つ構造に対して応答する第二高調波(Second Harmonic Generation: SHG)発現の有無を調べることによって α 相の構造に関する情報を得ることを目的とした.