抄録
近年、利用周波数の高周波数により、マイクロ波誘電体セラミックスにおいて、低い比誘電率(εr)と高い品質係数(Q・f)かつ0ppm/℃に近い共振周波数の温度係数(τf)を持つ材料が着目されている。さらに、通信機器の高機能化と小型化に伴い回路上の素子の高集積化が進み、デバイスの積層化が求められている。したがって、電極材料の融点より低温で焼成可能な高いQ・f値を持ちかつ低いεrを持つマイクロ波誘電体材料が必要である。そこで本研究では、優れたマイクロ波誘電特性を持つZn2SiO4-10wt%TiO2に着目し、焼結助剤としてLiFを用い、Zn2SiO4-10wt%TiO2の低温焼成化とマイクロ波誘電特性について検討した。
950~1100oCで焼成した試料の見かけの密度は、約4.10g/cm3を示し、この値は1200oCで焼成したものとほぼ同じ値であり、LiFの添加により低温焼成化が可能である。1100oCで焼成したZn2SiO4を用いたZNTL(y=5)では、εrとQ・f値はそれぞれ、εr=7~9、Q・f=12000~18000GHzであり、τfは負の値を示した(τf=-25ppm/oC)。しかしながら、1250oCで焼成したZn2SiO4を用いたZNTL(y=5)では、Zn2TiO4の生成を抑えることができ、比較的良好なマイクロ波誘電特性が得られた(εr=9, Q・f=45000GHz, τf= -5ppm/oC, Ts=950oC)。