抄録
直径20~30 µmのY2O3微小球は、熱中性子線照射によりβ線放射体となるので、カテーテルを用いて腫瘍のごく近傍の毛細血管に送り込み、そこからがんを直接放射線照射して治療する材料として有用である。しかし、上記Y2O3微小球は大きな比重を有するので、体内注入時に均質な懸濁液を得ることが難しく、しかも微小球が患者の背側の血管に溜まる恐れがある。先に演者らは、尿素の加水分解反応を用いれば、表面が緻密で内部がハニカム構造のY2O3微小球が得られることを示したが、テンプレートに用いる多糖類水溶液の粘度が高く、微小球を得ることは容易ではなかった。一方、アルギン酸塩は多価の陽イオンを含む水溶液中に滴下すると容易にゲル化することが知られている。そこで本研究では、イットリウム(Y3+)イオンを含む水溶液中でアルギン酸塩をゲル化させ、これを加熱処理して除去する手法により、多孔性Y2O3粒子を得ることを試みた。