抄録
マグネタイトなどの強磁性セラミックスをがんの腫瘍部付近に埋入し,外部からの交流磁場照射により患部を加温する温熱治療が低侵襲のがん治療法として注目されている。温熱種となる強磁性体を粒径20~30 µmの中空微小球(マイクロカプセル)にしておけば,がん細胞への栄養補給を遮断する効果も期待でき,しかも血管内で滞留し難く腫瘍部に到達しやすくなる。ただし,最適な粒径の強磁性マイクロカプセルを多量に得る方法を見出した報告は少ない。本研究では,水相が油相に分散したエマルションからの水酸化鉄の析出反応を利用してマグネタイトからなるマイクロカプセルを作製するとともに,粒径20~30 µmの粒子が得られる条件を追究することを目的とした。界面活性剤濃度や回転数を変化させてエマルションに分散する水相の径を制御することで,がん温熱治療に適した大きさを有する強磁性マイクロカプセルが多量に得られることが分かった。