抄録
小中高校生の理科離れが進む中,将来の科学や技術を担う世代を育成するためには,これら児童・生徒に理科のおもしろさを実感してもらうことが重要であると言われている.そこで,発表者らも,大学祭(工大祭2008)の中で研究室公開を実施し,小中高校生に,材料と力との関わりについて興味を持ってもらえるような体験型学習(『力と遊ぼう』プロジェクト)を実施したので,その実施内容について報告する.まず,最初の実験は,バケツに水を入れて正確に1kgfの重さにすると言う体験学習である.一見簡単そうに見えるが,ほとんどの来訪者は1kgfよりも重い方にずれてしまう.力については,小学生の頃から,フックの法則や重力で学習してきているが,この体験学習から,力そのものの実感というのが極めて曖昧であると言うことに,多くの来訪者が気付く結果となった.もう一つの実験は,荷造りテープの粘着面を一度貼り合わせてから,それを暗室の中で引きはがすと言う体験学習である.実際にやってみると,引きはがした粘着面から青色の発光が起きていることが観察され,それを見た来訪者は一様に歓声を上げた.この破壊発光という現象は,材料の破壊検知だけでなく,大地震の予知などにも活用されているという説明をすると,来訪者も,科学と生活とのつながりに思いを馳せ,研究の広がりを実感しているようであった.さらに,このような粘着テープの引きはがしに伴ってX線が放出されているということが,最近,Nature誌に掲載されたことを紹介すると,身近にある荷造りテープが最先端科学につながっていることに,再度,驚かされるという様子であった.